ときどき、どうしても人魚の絵が描きたくなることがあります。
なぜ人魚なのだろうと考えてみると、深い深い海に住む人魚は、私にとって「人の潜在意識」そのもののように感じられるからかもしれません。
海の底は暗くて静かで、ふだん意識していない記憶や感情が眠っている場所。
その奥深くにいる人魚は、広くて果てしない海の中で、思いもよらないほど強い力を持っています。
「やっと私に気が付いてくれたの?」と自分の潜在意識の人魚が、暗い海に白く浮かび上がって、語り掛けます。
人魚は、ときどき明るい海の上まで上がってきて、空に向かって手を伸ばします。
まるで、深い心の中に希望の光が差し込んでくるような瞬間です。
私は、そんなイメージの人魚の絵が描きたいと思っています。
心にふっと浮かんでくるイメージは、自分の潜在意識からのメッセージだといいます。
「私の心の深いところが、何かに気が付き、希望が差してきているよ」と、潜在意識の人魚が教えてくれているような気がするのです。
寝入りばなと、起き抜けのぼんやりした時間は、潜在意識に語りかけるチャンスだと言われています。
正直なところ、私は「そんな夢と現実の境界みたいな時に、自分で自分に語りかけるなんて、うまくできない」と思っていました。
ところが先日のこと。
眠りに落ちる直前、ふっと意識がゆらいだときに、
「私の潜在意識が変わります」
と、はっきり言っている自分の声に気が付いたのです。
自分でも思いもよらない言葉でした。
そのまま眠ってしまったのですが、心の奥のほうでは、普段は意識していないような変化を、どこかで強く願っているのだなあと、あとから驚きました。
心の中の人魚は、もしかしたら、私を深いところから変えたいと思っているのかもしれません。
そして人魚は、明るい天使と出会いたいと願っているのではないか——
そんなふうに感じました。
いつか、天使と人魚が出会い、よろこんでいる絵を描きたいと思っています。
深い暗い海の底から上がってきた人魚と、光の世界からやってきた天使。
潜在意識と意識が出会い、希望の光が差し込む瞬間を、キャンバスの上でそっと形にできたらいいなと思っています。