公募展用の F50 号の油絵を描いています。天使の絵です。白い馬に乗っています。
ぼんやりとした月あかりのまわりは薄いピンク色で、天使の羽根もピンク色です。
心に浮かんだイメージをそのまま描いているのですが、ピンク色を心ゆくまで使って描いていると、「自己愛」という言葉がふっと浮かびました。描いているのは、自己愛の天使です。おいしいお菓子をちょっとずつ味わうように、ゆっくりゆっくり描いています。
最近、「ありがとう」と自分自身に言うようにしています。
心の中で言うのですが、どんな小さなことにも言います。
たとえば、トイレに行った、立って歩いた、水を飲んだ……。
そんな当たり前のことにも「ありがとう」と言います。
そうしていると、今まで自分がどんなに「愛されたかったか」がわかってきます。
「ありがとう」と言うと、くすぐったいような、痛がゆいような感覚で、その言葉が体の中に広がっていきます。そこで初めて、自分でも気づかないうちに、どれほど自分を責めてきたのかに気が付きました。
自己愛は、なんて素晴らしくて、深いのでしょう。
心の深く深くにいる自分の潜在意識にも「ありがとう」と言います。
心に浮かんだ絵のイメージにも「ありがとう」と言います。
決してダメ出しをしません。
今までの私は、そんなイメージさえ「ダメだ」と否定していたのです。
少しずつですが、自分が変わってきたのを感じています。
そんな自分のところに、自己愛の天使がやってきたのだと思います。
少し前、ひとつ不思議な夢を見ました。
夢の中で、私は大きな、黒く輝く宝石を差し出されました。
それはとても美しくて、吸いこまれそうな光を放っていました。
けれどそのときの私は、「こんなもの、私にはいただけません」と言って、その宝石を受け取ることができませんでした。目が覚めてから、あの宝石は「輝く自己愛」そのものだったのだと気が付きました。
天使が、私に足りなかったものをそっと差し出してくれていたのだと思います。
自己愛は、決してわがままなものではなく、本当はとても美しく、深く、慈しみに満ちたエネルギーなのだと感じました。
自分を大切にすることからあふれてくる優しさが、やがて他者愛につながっていく——。
今度またあの宝石を夢で見たときは、もう迷わずに、両手でぎゅっと受け取りたいと思っています。
52歳になりましたが、この歳になって、こうして自己愛のことをあらためて感じられるのがうれしいです。若い頃にはわからなかった「心の深いところ」が、少しずつ見えてきたように思います。
年を重ねると、夢はむしろ深くなり、世界はさらに広がっていくのだなと感じます。
自己愛の天使を描きながら、そのことをゆっくり確かめているところです。
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