私の良いところを一つあげろと言われたら、「素直なところ」と答えます。
この前、街中でどうしても甘いものが食べたくなって、喫茶店に入ってケーキでも頼もうかと迷いました。でも、「いやいや、今はダイエット中でしょう」と自分に言い聞かせて、なんとか我慢しようとがんばりました。
それでも頭の中はケーキでいっぱい。困ってしまって、心の中で
甘いものが食べたくなくなる、甘いものが食べたくなくなる
と繰り返し唱えてみたのです。すると、不思議なことに、ふっと食べたくなくなってしまいました。ついさっきまで、あんなにケーキのことで頭がいっぱいだったのに。
「自分って、なんて素直なんだろう」
そう思った瞬間、ふとひらめきました。
「これなら、きっと自己暗示もかかりやすいんじゃないか」と。
家に帰って、さっそくノートを開き、
甘いものが食べたくなくなる
素晴らしい絵を描く
という二つの言葉を書きました。そして、一日二回、その言葉を声には出さずに心の中で繰り返しました。
すると、少しずつ甘いものを食べる回数が減り、長いあいだ抜け出せなかったスランプからも、ふっと抜け出して、また絵を描き始めることができたのです。
「なんて素直。自己暗示、恐るべし」と、ひとりで感心していました。
あとから知ったのですが、こういうやり方は「アファメーション」と呼ばれているそうです。
アファメーションとは、
自分の心に向かって肯定的な言葉を宣言すること。
「私はこうなります」「私はこう生きたいです」と、自分の内側に向かって、静かに宣言をくり返すことで、心の深いところにある種を目覚めさせていく、スピリチュアルな手法でもあるのだそうです。
難しいことをしているわけではなくて、私は
信じたいことを、自分で先に信じてあげる
そんなイメージで受け止めています。
おもしろいのは、その後のことです。
「素晴らしい絵を描く」というアファメーションは、今も続けているのに、
甘いものが食べたくなくなる
のほうは、いつのまにかやめてしまいました。
本当のところ、私は甘いものが大好きです。
きっと私の心は、「一生甘いものを食べたくなくなりたい」わけではなくて、
甘いものと、ほどよく仲よくなりたい
だけなのだと思います。
その一方で、「素晴らしい絵を描く」という言葉は、今も朝晩ノートを見ながら、静かに唱えています。この言葉は、私の心のいちばん深いところの願いとぴったり重なっているからか、とても自然に続けられるのです。
本当の心からの願いは、アファメーションにしやすいのだと感じました。
逆に、どこか無理をしている願いは、だんだん口にするのが苦しくなって、手放されていきます。
今、私は元気に何枚も絵を並べて描いています。
絵が生活の中心になるということは、本当にありがたいことです。
深い心の底から、春が芽生えたような気持ちで、絵を描いています。
冷たかった土の中から、やわらかな芽が、そっと顔を出すみたいに。
アファメーションという難しそうな言葉の中身は、
案外シンプルで、
「本当に願っている自分の春を、
いち早く自分で信じてあげること」
なのかもしれません。
その小さな春を、大切に育てていきたいと思っています。