仕事では、今はアクリル絵の具を使って絵を描いています。
それはそれでとてもおもしろく、大切なお仕事なのですが、
ここらへんで一度立ち止まって、ゆっくり油絵に向き合っていかなければならないような気がしています。
私は、考えごとをしながら、あるいは空想にふけりながら、
ゆっくり絵を描いていくタイプです。
だから、乾く時間のゆっくりな油絵具は、
私にとって、とても「安心して絵が描ける」画材です。
色を置いてから、少し眺めて考えて、
またその上にそっと色を重ねていく。
その「間」を許してくれるのが、油絵だなあと感じます。
それに、油絵は塗った色が、乾いてもほとんどそのままの色でいてくれます。
そのことも、私にはとてもうれしいところです。
キャンバスの上にのった色が、そのまま心の色としてそこにいてくれるようで、
みずみずしい気持ちで絵に向かうことができます。
そして何より――
私は、油絵の匂いが好きです。
溶き油や絵の具の混ざった、あの独特の香りをかぐと、
胸の奥がすこし高鳴って、「さあ、描こう」とワクワクしてきます。
もちろん、アクリルで素晴らしい絵をお描きになる方もたくさんいらっしゃって、
その技術やスピード感、透明感には、いつも「すごいなあ」と尊敬の気持ちで見ています。
けれど、自分のペースや心のリズムを考えると、
やっぱり私は、油絵のゆったりとした時間の中で絵を育てていくのが合っているのかもしれません。
来年は、油絵の作品をたくさん描きたいと思っています。
一枚一枚、キャンバスと対話しながら、
少しでも上達していけたらと願っています。
油絵の香りに包まれながら、
自分の中の静かな情熱を、少しずつ形にしていけたらうれしいです。