言葉って、不思議だなあと思います。
絵はまずイメージから生まれてくるものだと思っていましたが、言葉から生まれてくる絵も、たくさんあります。
私の手帳には、言葉がたくさん書いてあります。
コーヒーを飲む天使、復活、花になってしまった天使、赤と黄、母子の絵、神さまの隣、花飾りの髪結い、茶色とターコイズブルー……。
ふっと浮かんだ言葉を、とりあえずメモしておくのですが、その文字から立ち上ってくる心の中の心象は、とても繊細で、大切なものです。まだ絵のかたちにはなっていないけれど、**いつか絵にしたいと思っている、小さな「種」**のような感じがします。
最近、姉と一緒にオラクルカードを作ろうと話をしています。
姉が考えてくれるカードの言葉が、どれも心の深いところにまっすぐ届いてきて、読んでいるだけで胸がじんとします。
その中のひとつが、この言葉でした。
すべてはあなたのせいじゃない
この一行を見たとき、しばらくページを閉じることができませんでした。
どんな絵がふさわしいだろう、とワクワクする気持ちと同時に、胸の奥が静かにほどけていくような感覚があったからです。
長いあいだ、自分を責め続けてきた人に向けて、
「本当は、あなた一人のせいじゃないんですよ」とそっと伝える言葉。
その人が背負ってきた家族のこと、環境のこと、どうにもならなかった出来事の数々。
そういうもの全部を抱きしめながら、
**「もう自分ばかりを責めなくていいんですよ」**と語りかけてくれているように感じました。
作品ページにある**「すべてはあなたのせいじゃない」**という絵は、その言葉から生まれた作品です。
タイトルだけを見ると、少しドキッとするかもしれませんが、私の中では、とても優しい、守ってくれるような言葉です。
絵の中の天使や色合いは、
その優しさや赦しの感覚を、どうやってかたちにできるか、
言葉の向こう側にある気配を探りながら描きました。
言葉から生まれる絵は、どこか特別です。
私一人の想像だけではなく、その言葉を受け取ってきた人たちの想いだったり、
ずっと昔の記憶だったり、目に見えない誰かの祈りのようなものが、
一緒に絵の中に入ってくる気がします。
コーヒーを飲む天使、復活、神さまの隣……。
まだ手帳の中で眠っているそれぞれの言葉にも、きっと深い物語があります。
どんな色で、どんな構図で、どんな表情の天使になるのか。
言葉を眺めていると、その先にある見えない絵の輪郭が、
かすかに立ち上がってくるのを感じます。
言葉からイメージが立ち上がり、やがて絵になっていく。
そして出来上がった絵を見た誰かの心の中に、また新しい言葉が生まれていく。
その行ったり来たりの中に、とても静かなよろこびがあります。
絵を描くことは、
心の奥でひそやかに響き合う言葉たちとの対話なのかもしれません。