絵を描いて失敗してしまい、何度も逡巡して、やっぱりもう一度描きなおそうと決めたときの、ジェッソやモデリングペーストで白く塗りつぶしたキャンバスが好きです。
目の前に、また白いキャンバスがある。
それだけで、なんだかとても幸せだなあと思います。
でもその白さは、まったくの「まっさら」ではありません。
下にはさっきまでの失敗や迷いが隠れていて、その体温のようなものがうっすら残っています。
「もう一度」と気持ちを強くした、再起をかけたキャンバス。
そのぬくもりが下地になって、その上に描くこれからの絵に、そっと魔法をかけてくれるような気がするのです。
だから私は、白く塗りつぶされたそのキャンバスの前に立つと、今度こそ素晴らしい絵が描けるような気がして、少し背筋を伸ばして、また筆を取りたくなります。