スピリチュアルアートにあこがれています。
でも、それは「スピリチュアルアート」と名札のついた絵だけのことではありません。
私にとって、いちばんスピリチュアルだと思う画家は、やっぱりシャガールです。
青い夜空を浮かぶ花嫁、逆さまの家、空を飛ぶ恋人たち…。
説明しようとすると不思議なのに、絵の前に立つとイメージとインスピレーションが降ってくるのです。
玄関に飾っているシャガールの一枚(画集から切り取ったものですが)を見るたびに、
現実の重たさからすっと抜け出して、どこか高い深いところへ連れていかれるような気がします。
私にとっては、それが芸術性とスピリチュアルがひとつになっている状態なのだと思います。
私は、本物の芸術性とスピリチュアルな感性は、切っても切り離せない関係だと感じています。
心の奥深くを震わせるような絵は、題名に「スピリチュアル」と付いていなくても、
見る人の魂にまっすぐ届いて、何かを静かに変えてしまいます。
逆に、どんなに「スピリチュアル」をうたっていても、
そこに芸術としての切実さや、表現としての必然性がなければ、
心のいちばん深いところまでは届きにくいのではないか、とも思います。
だから私は、
良い絵はみんなスピリチュアル
と、ちょっと大きく出てしまいたくなるのです。
これからは、スピリチュアルアートの時代になっていくのではないか、
そんなことも感じています。
今の時代は、物質的にはどんどん豊かになっているのに、心のどこかで霊性を求めている人が増えているように感じます。
目に見える情報があふれているぶん、目に見えない世界や、自分の魂の声に気づきやすくなっている、ある意味では霊的な気づきが得られやすい時代なのかもしれません。
だからこそ、言葉を超えて「大丈夫」と伝えてくれるような絵、魂にそっと触れて、本当の自分を思い出させてくれるような絵が、ますます大切になっていくのではないかと思うのです。
私が大切にしてきたナイーブアートも、
その意味ではとてもスピリチュアルに近い表現だと感じています。
ナイーブアートは、
・遠近法にとらわれすぎない、素朴な構図
・子どもの絵のようでいて、じつは深い物語性
・うまさよりも「心の率直さ」を大事にすること
そういった特徴を持った絵だと、私は受け止めています。
技術を見せつけるよりも、
“うまく描こう”より“本当の気持ちを描こう”という願いのほうが強いところ。
その「不器用なまでの正直さ」が、ナイーブアートの魅力であり、
そのままスピリチュアルな部分にもつながっている気がするのです。
私は、そんなナイーブアートの素朴さ・童画の物語性・アールブリュットの自由さを、
自分なりのスピリチュアルアートの器にそっと乗せていきたいと思っています。
どんなスピリチュアルアートよりもスピリチュアルだと感じるシャガールの背中を、遠くから見つめながら、ナイーブアートのあたたかさと、スピリチュアルなまなざしを重ね合わせた絵を、私はこれからも、少しずつ描いていきたいです。